お金

同棲の初期費用、何にいくらかかる?生活費はどう負担するべき?

そなえる 権藤 知弘

同棲の初期費用、何にいくらかかる?生活費はどう負担するべき?

【画像出典元】「Prostock-studio/Shutterstock.com」

同棲という言葉には、甘酸っぱい雰囲気が漂います。同棲のきっかけは、好きな人と一緒にいられる時間を増やしたいということもあれば、結婚生活を送れるかどうかを試すために2人で暮らし始めるということもあるでしょう。

いずれにしても、同棲は同じ部屋に住み、生活を共にするということなので、避けては通れないのがお金の問題です。今回は、同棲するときに気をつけて欲しいお金のお話です。

同棲する際にかかる初期費用

1人暮らしでも2人暮らしでも、初期費用や毎月の生活費の中で大きな割合を占めるのが住居費です。それまで実家暮らしなのか、1人暮らしなのか、どちらかが住んでいる住居に一緒に住むのかなど、状況によって住居に関連する初期費用は大きな違いが出てきます。同棲に限りませんが、新たに住居を借りる場合、一般的に下記の初期費用が必要です。

敷金:家賃1カ月分程度

賃貸契約を終了し、退去する際の原状回復費用に使うためのものです。契約時に支払いますが、退去時使わなかった分は返金されます。敷金は退去時の原状回復の費用に充てられますが、住居を汚損・破損した場合に貸した側と借りた側のどちらの負担にするかでトラブルになることが多発していました。敷金を巡るトラブルを解消するために、現在は国土交通省からガイドラインが出され、経年劣化や通常の使用による損耗などの修理費用は賃料に含まれるものとされています。その効果もありトラブルは減少しているようですが、契約前に退去時の原状回復の取り扱いについてしっかりと確認しましょう。

礼金:家賃1カ月分程度

一般的に部屋の所有者である大家さんに支払うものです。敷金と異なり、退去時にも返金されません。なお近年では礼金不要のケースも増えてきました。これは賃貸物件のオーナーが、なるべく空室期間を短くしたいという意向もあるようです。

前家賃or日割り家賃:家賃1カ月分程度

月の途中から入居する場合は日割り家賃が発生します。また家賃は「前月に次月の家賃を支払う」ということが多く、3月に契約し入居が4月という場合は、3月中に4月の家賃を支払います。

仲介手数料:家賃1カ月分程度

仲介をした不動産会社に支払います。法律で上限は家賃の1カ月分と定められています。

火災保険料:コンクリート住宅の場合、2年で1.5万~2万円程度

賃貸の場合の火災保険には、通常は入居者自身の家財に対する「家財保険」、大家さんへの賠償として「借家人賠償」、入居者が第3者に対して賠償責任を負った際の「個人賠償責任保険」の3つを含みます。なお建物自体の保険は建物の所有者が契約するので、賃貸の場合、入居者は自分たちの家財に対して火災保険を契約します。

契約時に同時に加入しておくのが、「借家人賠償責任保険(特約)」です。これは、入居者が借りている部屋に損害を与えた際に必要になる保険です。火災や、不意の事故で壁に穴を開けた場合など、入居者が明らかに物件のオーナーに損害を与えたようなケースが対象になります。

また「個人賠償責任保険(特約)」は、「お風呂の水を止め忘れ、下の階に水ぬれ被害を発生させた」などのようなケースで必要になります。

通常の火災保険契約では、借家人賠償責任特約や個人賠償責任特約をパッケージにしていることがほとんどですが、念のため、契約前に補償範囲を確認しましょう。

保証料:家賃1~1.5カ月分程度

部屋の賃貸契約を行う際に、以前は親族などを連帯保証人にすることを求められることが一般的でした。ただ近年では核家族が多くなり、また高齢化のために連帯保証人を準備できないケースも増えています。その場合、連帯保証人に代わって、保証会社を利用することになります。保証会社は、入居者が万が一の滞納などが発生した際に、大家さんに家賃を立て替える役割を担います。

なお保証料を支払っているので家賃を滞納して良いというわけではなく、保証会社から家賃の支払いを求められることになります。

引っ越し費用:2~5月上旬のハイシーズンは高め

2月から5月上旬のゴールデンウィークぐらいまでは、進学・就職などで引っ越す人が多い時期です。この時期に引っ越しすると、引っ越し費用は高くなります。同棲であれば各々が自身の家財を持ち寄るということになるので、そこまで過剰な量にはならないとは思います。それでもいわゆる春の時期に引っ越しするのであれば、それなりのコストが必要ということはあらかじめ考えておきましょう。

引っ越し業者を利用して引っ越すと決まったら、家財の量や移動距離などにより費用が大幅に変わるので、まずは複数の会社から見積もりを集めましょう。なお見積もりを集める際、移動の際に発生した家財の傷や、修理が必要になるような元の部屋及び新居への損害への対応も事前に確かめておきましょう。通常は引っ越し業者が加入している保険で補償されますが、保険に加入していないなど「安かろう悪かろう」といった引っ越し業者もいるようです。念のため確認しましょう。

最近は敷金・礼金無料という物件も増えてきました。初期費用を抑えるという点ではありがたいのですが、退去時に部屋を原状回復させるために高額な費用を請求されることがあります。部屋探しの際には退去時にかかる費用も必ず説明を受けましょう。

地域の違いや、同じ地域でも建物の築年数や場所などにより、家賃は大きく異なります。 そのため一概にいくらというのは言いにくいのですが、新たに住居を借りるケースでは初期費用として家賃の半年分を目安に準備しておくと良いでしょう。

なお、どちらかの住居に同居するというケースであれば、大きな費用はかからないでしょう。ただし、無断で単身者用物件に2人で住んでしまうと、思わぬトラブルが発生する可能性があります。あらかじめ賃貸契約書の入居者に対する規定などを確認することをおすすめします。

初期費用を抑えるためにできること

新芽がコインの山から成長する
【画像出典元】「stock.adobe.com/rrice」

初期費用の大部分は住居費が占めると思いますが、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を一からそろえると高額な費用が必要です。同棲前から使用している家電製品を使うことができれば、初期費用は抑えられます。

「この際だから」とついつい購入しがちですが、同棲生活をスタートさせて徐々に買い換えや新規の購入をしても遅くはないと思います。また中古品や新古品に抵抗がなければ、リサイクルショップやネットオークションなどを活用すると初期費用を抑えることができるかもしれません。ただし大きな家具や家電製品などは、配送や設置作業を個人レベルで行うことが難しいことも多いので注意しましょう。そのほかに必要なものは少しずつそろえていくのがおすすめです。

毎月の生活費、2人分の目安額はいくら?

総務省が発表している家計調査から、2人以上の世帯の支出を見てみましょう。

2024年1月に発表された、2023年11月の世帯支出平均は、家賃を除くと25万4130円でした。内訳を見てみると食料費が8万6395円で最も多く、その他の消費支出で4万4329円、交通・通信費で4万294円と続いています。

引用:総務省「家計調査報告(二人以上の世帯)-2023年(令和5年)11月分」より一部抜粋

この金額は2人以上の世帯のデータであるため、2人暮らしの生活費より少し高めに出ていると思います。ただおおよその目安にはなりますので、この金額より高いようであれば使いすぎの可能性があります。

また前述したように、毎月の支出の中で大きな割合を占めるのが家賃です。地域差が大きいため一概には言えませんが、「手取り収入の3割以内」が望ましいでしょう。また交通事情の関係で自家用車の所有が必須であれば、維持費にも注意しましょう。

同棲におけるお金の分担の仕方

お金のことがうまくいくかどうかは、同棲生活がうまくいくかどうかに直結していると思います。家賃を含めた生活費や貯金などを、どのように分担していくのかは良く話し合いをした方が良いでしょう。いくつかのパターンで考えてみましょう。

そのほかにもいろいろな分担・負担の方法はあると思いますが、筆者が見たり聞いたりしたパターンは上に挙げたものが多い印象です。

2人の収入額が近ければ良いのですが、そうでなければ不公平感が出ないようにしましょう。同棲は毎日の生活が伴うものなので、片方だけに大きな負担がかかると続かなくなる可能性もあります。また同棲の先に遠からず結婚があるのであれば、2人のお財布を1つにする方向で考えてみることをおすすめします。1つのお財布から生活費や貯蓄、それぞれのお小遣いなどを支出するのはいかがでしょうか?

2人暮らしで得られる金銭的なメリット

貯金するカップル
【画像出典元】「Proxima Studio/Shutterstock.com」

同棲することで得られる金銭的なメリットで言えば、収入に対する家賃などの負担が下がることが考えられます。仮に同棲前に毎月の家賃が6万円、同棲後は2人で9万円の賃貸物件に入居したようなケースでは、分担の仕方にもよりますが、手取り収入に対する家賃の割合が下がることがあるでしょう。

なお、税金や社会保険などは、同棲したから何かメリットがあるということはありません。なお同棲と似た形で事実婚という婚姻の形がありますが、事実婚の場合は事情が異なります。事実婚の場合、所得等の要件を満たしていればパートナーの社会保険に加入可能です。パートナーの社会保険に加入できれば、健康保険料や年金の保険料などの負担が減るというメリットがあります。ただし事実婚はお互いに結婚しているという合意があり生計を一にしている、また住民票の届け出に未婚の夫・未婚の妻という記載がある等の条件があります。同棲は社会保険の制度の視点では単なる同居になり、繰り返しになりますが、税金や社会保険の観点でのメリットはありません。

まとめ

同棲というスタイルが結婚までのお試し期間であれば、住居に関する初期費用や毎月の生活費について、同棲前に2人で良く話し合いをしましょう。いろいろなバックボーンがある2人で共同生活を行うので、楽しいことだけではないと思います。その中でお金のことは特に避けては通れないテーマでしょう。早めにしっかりと話し合い、必要があればその時々で修正をしていきましょう。

勢いで同棲をスタートさせたカップルの方で、最初のうちは「なんとなく」で分担している人もいるかと思います。うまくいっているのであれば、早めに今後の分担をどうするかについて話し合いをしましょう。お金のことは不公平感を持ちやすいテーマなので、深刻な問題が発生する前に2人でルールを決めましょう。

どういう経緯であれ、お互いが側にいたいということから同棲がスタートすると思います。カップルの数だけ考え方が存在するので、何が正解なのかは難しいところですが、お金の話は大切です。思いやりを持ちながらも、きちんと話をしていきましょう。

同棲にかかる費用に関するQ&A

Q:アパートの退去費用はいくらぐらい必要ですか?

A:契約時の条件にもよりますが、基本的には契約時に支払った敷金で退去費用をまかなうことができると思います。ただし室内で喫煙をしていると、クリーニング費用を追加請求されるケースが多いようです。

Q:お互いの同棲費用負担の目安はありますか?

A:年齢差や収入によって変わってくると思います。まずは、お互いが10万円ずつ負担、その金額で家賃や食費などの基本的な生活費がまかなえるかを試算してみましょう。ポイントは、家賃を高くしすぎないようにすることだと思います。